今日の環境分析 2023年11月17日

 昨日、米国の新規失業保険申請件数が発表されました。申請件数は23.1万人と市場予想の21万人を上回り、失業保険受給者数は186.5万人と8週連続で増加し、2年ぶりの水準にまで悪化しています。労働市場の逼迫は緩やかに軟化している模様です。米長期債金利は低下しました。フィラデルフィア連銀製造業景気指数は、改善するもののマイナス圏が続いています。米国景気のピークアウト感は強まってきていると考えており、米国の金融緩和への転換は前倒しになるのではないかと思います。こうした点がUSDの上値の重さにつながっているものと思われます。懸念されていた米国の新つなぎ予算案は可決され、政治的混乱は先送りされました。市場全般では、ボラティリティは高まったものの、調整の動きを見せたため、方向感のつかみにくい日となりました。 

 通貨相関からは、USD・CADの弱さが継続しています。JPYの弱さが若干緩和されました。AUD・NZDの強さは継続しており、EURの強さも戻りました。上位足から下位足まで強さを示しているEURを軸に通貨選択をしていきたいと思います。

 本日は、英国の小売売上高に注目です。GBPはEUR対比での弱さが続いていることから、英国景気の動向を判断したいと思います。また、ECB総裁の発言にブレがないのかに注目したいと思います。内容次第では堅調なEURに転機を迎える可能性もあるため、警戒しておきたいと思います。

今日の環境分析 2023年11月16日

 昨日発表された日本の第3四半期GDPは、前期比-0.5%となりました。物価高に伴う消費の停滞が主な要因です。輸入物価の抑制に向けて円高方向への金融政策にかじ取り変更を期待したいですが、まだ時間がかかりそうです。米国では10月の生産者物価指数が発表され、前月比-0.5%と市場予想を下回り、2020年4月以来の低下幅となりました。10月の小売売上高は前月比-0.1%と市場予想は上回るものの、7か月ぶりのマイナスに転じました。また、10月の英国の消費者物価指数は、前年比+4.6%と市場予想を下回り、インフレの動きが鈍化していることを確認しました。こうした動きを総合的に判断していくと、世界経済の停滞懸念が徐々に強まってきているものと思われます。その動きをいち早く示しているのが、USDの動きではないかと考えています。

 通貨相関からは、USD・CADの弱さが継続するとともに、JPYの弱さも目立っています。EUR・GBPの強さは一服し、中立的な位置づけだったAUD・NZDの相対的な強さが目立つようになりました。メジャー通貨全般に弱い展開になっているものの、メジャー通貨内での強弱関係が明確になりつつあるので、通貨の組み合わせには注意したいと思います。USD・JPYを軸とした通貨選択をしたいと思います。

 本日は、オーストラリアの失業率に注目です。また、米国の新規失業保険申請件数にも注目です。日本時間早朝に米中首脳会談が行われました。共同会見の内容に注目しています。中国経済の停滞が一段と顕著になってきているなか、経済面・軍事面で中国側がどのような姿勢を示すのかに注意したいと思います。また、米国では明日がつなぎ予算の期限になっています。政府の一部機関の閉鎖を回避できるのか、米国議会の動きに警戒したいと思います。本日も、欧米金融当局高官の発言が相次ぐので、その内容には注意したいと思います。

今日の環境分析 2023年11月15日

 昨日、米国の10月の消費者物価指数が発表され、前年同月比で+3.2%と市場予想の+3.3%を下回り、前月比では0%となりました。FRBの求める2%台には達していないものの、5か月連続で3%台となりインフレの落ち着きを確認することになりました。このため、米国の長期債券金利が低下し、12月のFOMCにおいては利上げの可能性は低下したとの判断が強まるとともに、来年の利下げの時期が早まるのではとの見方も高まりました。ドイツのZEW景況感調査では7か月ぶりにプラス圏となり、ドイツ経済の底入れとの見方が出てきました。欧州経済の足を引っ張っていたドイツだけに、底入れ確認できれば欧州経済の安定化につながります。そうなると、ECBはインフレ対策に特化した金融政策が可能となるため、欧州金利の高止まりにつながるものと思われます。

 通貨相関からは、USDの強さが一転して弱くなり、つれてCADも弱くなりました。中立的と考えていたJPYの弱さが目立つようになりました。USDも弱いためUSDJPYこそ下落しているものの、その他のクロス円通貨はJPYの弱さを背景に大きく上昇しています。EUR・GBPは強さを持続しており、AUD・NZDは中立的な位置づけになりました。EUR・GBPを軸に通貨選択をしたいと思います。

 本日は、米国の小売売上高と卸売物価指数に注目です。昨日の消費者物価指数ほどの市場インパクトはありませんが、消費者物価指数同様の結果になるようだとドル安の動きは加速されるものと思われます。また、英国の消費者物価指数や日本のGDPにも注目したいと思います。昨日の消費者物価指数の発表を契機に、市場にはトレンド指向の動きが強まったものと思われます。このため、今までになくちょっとした材料でも敏感に市場は反応することが想定されます。新たなトレンドの動きが持続するのか注目していきたいと思います。

今日の環境分析 2023年11月14日

 昨日、USDJPYは151円台後半に入り年初来高値を更新し、昨年10月以来の水準となりました。1990年以来33年ぶりの水準を意識する動きが出てきました。日銀のマイナス金利解除は賃上げが確認できる春までは期待できず、対するFRBは再度の利上げの可能性もある一方で利下げは来年半ばまで期待できないため、日米金利差を背景とした動きが続いています。
 大手格付け会社3社のうちで唯一米国債を最高格付けとしていたムーディーズが、財政悪化を背景に最上位の格付けを維持するものの、格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げました。今週金曜日には米国議会が合意している政府機関閉鎖をさけるための「つなぎ予算」が期限を迎えます。下院議長は来年2月までのつなぎ予算案を発表していますが、予算案が成立しないと一部の政府機関の閉鎖を招くことになり、格下げリスクが強まるものと思われます。金融市場の不安定警戒から、ドル安の動きに転じる可能性を否定できません。

 通貨相関からは、USDの強さが継続しており、USDに連動してCADの強さを確認することができます。EURも堅調な動きが持続しています。AUD・NZDの弱さが目立つようになってきました。JPY・GBPは中立的な位置づけですが、軟調な展開になっています。USD・EURを軸に通貨選択をしたいと思います。

 本日は、米国の消費者物価指数に注目です。内容次第で、次回のFOMCにおける利上げの可否を決定する要因になることが考えられます。消費者物価指数が市場予想との乖離があった場合には、USDの動きが加速することが予想されます。市場へのインパクトが大きいため、発表まではUSDには慎重な姿勢で臨みたいと考えています。また、英国の失業率にも注目です。GBPの動きに警戒したいと思います。本日も欧米金融当局高官の発言が相次ぐことから、その内容には注意する必要があります。

今日の環境分析 2023年11月13日

 週末金曜日は、ミシガン大学消費者信頼感指数が発表され、60.4と市場予想の63.7を下回り、4か月連続下落しました。低所得者や若年層の消費者心理が後退したことが大きな要因のようで、インフレへの警戒感が一段と高まったものと思われます。英国のGDPは、2期連続で低下したものの、市場予想のマイナス成長は回避しました。また、ECB総裁は金融引締めを継続することを確認し、利下げは今後数四半期はないことを明言しました。先週はFRB高官の発言が相次ぎ、タカ派発言が目立ちました。市場全般では、ボラティリティが低下し、方向感のない小動きに推移しました。その中で、USDJPYは151円台半ばに達し、10月の前回高値に迫ってきました。

 通貨相関からは、USD・EURの強さやJPY・AUDの弱さが継続しています。GBPは中立的な位置づけですが、徐々に弱さが見られる動きになってきています。マイナー通貨全般に弱い状況が続いています。USD・EURの買いを軸に通貨選択をしたいと思います。

 今週は、火曜日の米国消費者物価指数が最大の注目です。足元の米国債券利回りの低下を受けて次回のFOMCにおける利上げ見通しが出てきました。消費者物価指数の内容次第では、その動きが強まる可能性があります。水曜日の米国の小売売上高や卸売物価指数・日本の第3四半期GDP・英国の消費者物価指数、木曜日のオーストラリアの失業率・金曜日の英国の小売売上高に注目です。その他、先週に続き、欧米金融当局高官の発言にも注意したいと思います。本日は、注目すべき経済指標はありません。カナダは祝日のため金融市場は休場です。

今日の環境分析 2023年11月10日

 昨日、日本銀行は10月30日から31日にかけて開催された金融政策決定会合における主な意見を公表しました。議論の中では、「金利ある世界」と表現して金融緩和からの出口を模索しており、ゼロ金利解除は着実に近づいてきている模様です。また、FRB議長の発言があり、その内容はサプライズがなかったものの、「適切なら躊躇なく利上げ」とのタカ派発言に反応しドル高となり、USDJPYは151円台に再び乗せてきました。しかし、米国の新規失業保険申請件数は労働市場の冷え込みを確認する結果となったことから、再利上げの可能性を探るよりも、金利低下の時期を模索する動きに関心が高まっていると思われます。

 通貨相関からは、USD・EURの強さが継続しています。また、JPYの強さも回復しました。対して、マイナー通貨全般に弱い展開になってきました。依然として発散の動きを確認するのが困難な状況ですが、徐々に方向感が定まりつつあるように思われます。メジャー通貨の買いを軸に通貨選択をしたいと思います。

 本日は、オーストラリアの四半期金融政策報告や、英国の第3四半期GDP、米国のミシガン大学消費者信頼感指数に注目です。今週は、市場インパクトの大きい経済指標の発表がなかっただけに、ちょっとした変化に過剰な反応をすることがあるので警戒したいと思います。また、欧米の金融当局高官の発言が続いていることから、その内容にも注目しておきたいと思います。週明け月曜日はカナダは祝日となります。

今日の環境分析 2023年11月9日

 USDJPYは一時151円台を付け、EURJPY161円台と15年ぶりの水準まで円安が進んでいます。USDJPYは為替介入の警戒から上値は重い展開が続いていますが、介入懸念のないその他のクロス円通貨は、キャリートレードを目的とした円売りの動きが継続しています。前回の日銀金融政策決定会合において、イールドカーブコントロールの方針変更を行い、円安の動きには歯止めがききましたが、早くも剥落した様相です。ゼロ金利の解除など明確な利上げを示唆する内容でないと、円安の動きを止めるのは困難な状況にあるように思われます。しかし、一方で年末が近づき、ポジション整理からJPYの買い戻しの動きの可能性は高いため、一段の円安を想定しづらい状況にあります。

 通貨相関からは、マイナー通貨全般に弱い局面になってきました。これまで堅調だったAUD・NZDの弱さが目立っています。多くの通貨が上位足から下位足までの強弱関係が揃ってきていることから、発散の動きは強まってきていると思われます。まだ、下位足でも多くの通貨はトレンドの確認には到っていませんが、収束の動きはみられることからも発散の動きを期待したいと思います。

 本日は、米国FRB議長やECB総裁の発言が予定されており、その内容に注目しています。また、米国の新規失業保険申請件数にも注目です。先週の雇用統計で確認された労働環境の足元の状況を再確認することになるのか注意したいと思います。中国では消費者物価指数が発表されます。中国経済の動向を判断するうえでも注目しておきたいと思います。

今日の環境分析 2023年11月8日

 昨日は、オーストラリアの政策金利が発表され、市場予想通り6月以来となる+0.25%の利上げとなりました。インフレ長期化リスクを懸念した模様です。しかし、市場では利上げを織り込み済みだったようで、材料出尽くし感からAUDは急落しました。米国株式は堅調な展開になっており、その背景には米国金利の低下があります。このため、USDの弱さにつながっています。JPYは弱さが継続しているためクロス円は上昇していますが、USDJPYは介入警戒もあることから、頭の重たい展開になっています。全般に方向感のない状況になっているため、トレードをしづらい環境が続いています。

 通貨相関からは、USD・CADの弱さが継続しています。JPYも弱さが継続しており、EUR・GBPは堅調な展開になっています。AUDは昨日の急落で再び弱い通貨群に入ってきており、なかでもNZD対比での弱さが際立っています。上位足から下位足まで弱さの揃っているJPY・CADの売りに注目しています。ただし、USDJPYはUSDも弱いため、見送りたいと思います。

 本日は、主要な経済指標の発表はありませんが、金融当局の発言が続くことから警戒しておきたいと思います。市場へのインパクトは小さくても、個別の意見が徐々に集約されていくと大きな動きにつながります。小さな内容にも注意して耳を傾けておきたいと思います。方向感のつかみにくい展開になっており、様子見を基本姿勢にしています。

今日の環境分析 2023年11月7日

 昨日は、週末の米国雇用統計発表後の大きな変動を受けた週初だったものの、大きな変動はなく、通常の月曜日の大人しい動きとなりました。ボラティリティが低下し、小動きの推移となり、多くの通貨ペアで下位足に確認できていたトレンドの動きはいったん調整に入りました。収束の動きを強めており、発散に向けた準備段階に入ってきていると考えています。

 通貨相関からは、USDの弱さとともにJPY・CADも弱さが継続しています。AUD・NZDは堅調な展開となっており、EUR・GBPは中立的な動きになっています。メジャー通貨全般に弱さを確認できる状況にあることから、堅調なAUD・NZDを軸にした通貨選択をしたいと思います。ただし、AUDは昼過ぎに発表される政策金利の発表を待ちたいと思います。

 本日は、オーストラリアの政策金利に注目です。10月までは3回連続据え置いていますが、足元の消費者物価指数の上昇に伴い、今月は利上げ再開の可能性が高まっています。このところのAUDの強さは、こうした利上げを織り込んだ動きになっており、利上げ見送りとなった場合には急落に警戒したいと思います。また、注目度は低いですが、FRB高官の発言が相次ぎます。市場では、米国金利の再利上げはなく、来年の利下げを見込む動きが強まっています。先週FOMCを終えてブラックアウト期間が解除され、FRB高官の個々の考えが自由に発言されることから、市場への直接的な影響は少ないと思いますが注目したいと思います。

今日の環境分析 2023年11月6日

 週末金曜日に発表された米国の雇用統計では、雇用者数の伸びが15万人と市場予想の18万人から大きく下回り、米国の金融引締めの打ち止め感が強まりました。同時刻に発表されたカナダの雇用統計でも市場予想を下回りました。その後に発表された米国のISM非製造業景況指数は51.8と5か月ぶりの低水準となりました。景気停滞懸念が強まったことで長期金利が低下し、USD安の動きを加速しています。

 通貨相関からは、下位足でUSDが最弱通貨となりました。USDにつれてCADの弱さも目立っています。AUD・NZDの堅調さが続き、GBPは相対的な強さを確認することができます。JPYは対USDで反発の動きから最弱通貨を脱しました。EURは反落の動きを強めており、メジャー通貨全般に弱い動きになっています。AUD・NZDの強さを背景とした通貨選択をしたいと思います。また、USD安の動きからドルストレート通貨にも注目しています。

 今週は、火曜日のオーストラリア政策金利の発表や木曜日の10月末の日銀金融政策決定会合における主な意見が公表されます。また、同日(日本時間金曜日未明)のFRB議長の発言にも注目です。先週までと比べ、市場に大きなインパクトを与える経済指標の発表が少ないため、落ち着いた展開が想定されます。本日は、日銀総裁の発言に注目です。先週の金融政策決定会合において長短金利操作の柔軟性を高めた後だけに、総裁発言の隠れた真意を確認できるのか注目しています。依然として金融緩和継続と発言しているものの、金融緩和からの脱却の動きは明白なので、徐々に発言内容に変化が生じてくるものと考えているため注目しています。
 本日から米国時間は冬時間に入ります。このため、終値の表示は明日から日本時間朝7時時点のものに変更になります。