先週、日銀総裁の発言(「値上げの許容度は高まっている」(後日修正))がありました。世間の反響は大きく、値上げへの拒否反応の大きさを確認する結果となりました。値上げ要因は、多くが原油などのエネルギーや農産物などの輸入物価の上昇によるものです。物価上昇は、ウクライナ情勢を始めとした国際情勢の悪化に伴う原材料価格の上昇ですが、円安による実質価格の上昇もあります。こうした状況の中、日銀総裁の発言は確信犯かもしれないと考えています。多くの国民が物価上昇を忌避しているなかで、物価上昇要因の一つである円安対策があると思います。実際、例の発言の数日後に、日本銀行、財務省、金融庁の三者で円安対応の会合が開かれています。物価上昇忌避=>円高への転換=金融緩和継続の停止になります。
元々、日本銀行の大幅な金融緩和策はアベノミクスを推進しようとする政府当局からの強烈な要請に基づいて始まっています。中央銀行の独立性を無視したアベノミクスの推進の犠牲になったと思われます。日銀総裁にしてみれば、中央銀行の独立性を奪われた結果の金融緩和なので、意地になって継続しているようにも見えます。現在、ETFを通して多くの上場企業において日本銀行が大株主になっているという異常事態にあります。証券理論を勉強すると分かりますが、日本銀行が民間企業の株式保有する事態は、昭和40年代の証券不況の際の2回の日銀特融があるだけです。これは、景気低迷・株価下落を支える意図で行われたもので、特異な存在になっています。それが、アベノミクスでは景気が上昇していく中で、金融緩和策の一環として株価を支えるためのETF買いを行ってきました。金利引き上げが難しい現状でETFの売却があれば金融緩和の継続に終止符を打つことになると思います。
米国のインフレ懸念のピーク感を確認するには難しい状況ですが、金融引き締め方針の全容は見えてきています。今ここで、日本が金融緩和の継続中止を示唆するコメントがあれば、サプライズとして一挙に円高に進むリスクがあります。
日銀総裁の発言は、金融緩和の継続終焉を示唆したい思惑であったのではと推察しています。