今日の環境分析 2023年7月31日

 先週末金曜日、日本銀行はイールドカーブ・コントロールの政策修正を発表しました。金曜日未明の新聞報道は金融当局の意図的なものと思われ、この時間での情報リークに市場は疑問視しています。新聞報道で急速に進んだ円高は、欧州時間以降に反転し発表前の水準に戻りました。事前の新聞報道のないサプライズの政策変更であれば、円安修正が可能であったと思われるので、政策報道の失敗といえそうです。しかし、日銀の大規模金融緩和からの脱却が明確に示され、加えてFRB・ECB総裁のハト派に転換した発言もあり、円高指向の動きは強まるものと思われます。また、同日発表された米国の6月のPCEデフレーターは、前年比+3.0%と前回よりも伸び率が鈍化し、インフレ低下を確認する結果となりました。FRBが金融政策の決定に際しこの指標を最重要視しているため、次回の利上げ見送りの可能性を高める結果となりました。金曜日の朝の段階では大きなトレンドの始まりを期待していましたが、反転の動きが見られたため、先送りになった模様です。

 通貨相関からは、JPY・USDの強さが継続しています。日銀の政策転換はグローバルな資金循環に大きな影響を与えるため、今後は安易に円安方向には向かいにくい状況になってきました。EUR・GBPともに堅調となり、マイナー通貨の弱さが目立つ展開になっています。本日は、月末・週初であることから動きにくい展開ですが、JPY・USDを軸に通貨選択を検討したいと思います。

 今週は、火曜日のオーストラリアと木曜日の英国の政策金利、木曜日のISM非製造業景況指数、金曜日の米国の雇用統計が最重要な注目材料になります。なかでも、米国の雇用統計は次回の利上げの有無を判断することから、市場へのインパクトは大きいと考えられます。雇用統計の前には、木曜日の新規失業保険申請件数など労働関連統計が発表されるため、重要度は低いものの市場への影響を無視できない状況にあります。そのほかにも、市場に影響を与えそうな経済指標が続くため、個々の経済指標には注意が必要です。
 本日は、月末のためポジション調整の動きに警戒したいと思います。日本の鉱工業生産、欧州圏の消費者物価指数や第2四半期GDPの内容を注視する必要がありそうです。金融緩和の日本と金融引締めのその他先進国とで、金融政策の方向性が修正されつつあります。今後、大きな資金の流れが変化することを警戒していきたいと思います。

今日の環境分析 2023年7月28日

 本日午前2時頃、日本銀行がイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正案を議論しているとの日経報道が流れ、USDJPYは141円から138円台までの急激な円高となりました。昨日から開催されている日銀の金融政策決定会合において議論されている模様で、本日昼頃の政策金利と声明の発表の際に、金利操作を柔軟にして長期金利の0.5%超えを容認する方針を打ち出すものと思われます。少しずつ金融政策に変化が生じてきていることが円安を回避する動きにつながっています。
 昨日は、ECBが政策金利を発表し、事前の予想通りの+0.25%の利上げとなりました。前日のFOMC同様に政策金利の内容にサプライズはなかったものの、ECB総裁の発言を前にタカ派発言が修正されると想定した動きからEURは下落しました。実際、ECB総裁は会見で、次回の利上げはデータ次第と発言し、利上げ停止を含めて検討する方針となりました。このため、EURは一段と下落する展開になりました。
 また、米国の第2四半期GDPは前期比年率で+2.4%と4四半期連続のプラスとなりました。さらに米国の新規失業保険申請件数は3週連続で減少し、米国経済は失速していないことを確認することになりました。
 昨日は、市場全般に大きく動き、日銀の金融政策が前倒しで確認できたことから、トレンドを確認する動きが早まったものと思われます。

 通貨相関からは、JPYの強さが目立つ展開になってきました。日銀の政策修正の動きが大きなトレンドを作り出そうとしています。欧州金利の利上げ停止の可能性が出てきたことからEURが売られ、堅調な米国経済を背景としたUSDが買われる展開となりました。EURの弱さは対比するGBPにも影響を与えているため、GBPの堅調さも確認できます。EURを除くメジャー通貨の買いを中心の通貨選択に注目しています。ただし、通貨の強弱が明確になりつつあるため、強弱の順番を間違えない通貨選択を心がけたいと思います。

 本日は、日銀の金融政策決定会合が最大の注目材料でしたが、事前に報道が漏れたことから、報道通りの内容になるのかに注目しています。もし、報道を否定する内容であるとサプライズとなり円安が加速する可能性があるので警戒したいと思います。日銀総裁の記者会見の内容に注意したいと思います。朝方には、東京の消費者物価指数が発表されので注視しています。また、オーストラリアの小売売上高やドイツの消費者物価指数、カナダのGDP、米国のPCEデフレーターなど、重要な経済指標の発表が続くので、日を通して個々の内容に対する該当通貨の動きを警戒したいと思います。

今日の環境分析 2023年7月27日

 本日未明に発表されたFOMCの政策金利は、市場予想通りの+0.25%の利上げとなりました。サプライズはなかったため、政策金利発表直後の市場は驚くほどの無反応になりました。その後のFRB議長の記者会見では、9月の利上げはデータ次第と、会合ごとに判断すると発言しました。年内にあと1回の利上げを想定しているものの、データ次第では見送りの可能性も出てきています。タカ派的な発言を警戒していただけに、予想外のハト派的な発言にUSDJPYは急落する場面がありました。また、朝方発表された第2四半期のオーストラリアの消費者物価指数は、前年比+6.0%と前回の+7.0%や事前予想の+6.2%を下回る結果となりました。オーストラリア経済のインフレ鎮静化の動きからAUDは軟調な展開になっています。昨日は、全般に小動きの推移となりましたが、今月の動きと方向感が一致しています。今日・明日の欧州・日本の金融政策の発表や月末に近いことから動きづらい展開ですが、動き出す準備はできつつあると考えています。複数の通貨ペアが日足のミドルバンドを意識した動きになっており、USDJPYは先行して頭を押さえられて下落しています。新たな方向感の確認をする動きと考えており、値動きに注目しています。

 通貨相関からは、EURの弱さが継続しているのに加え、USD・CADの弱さも目立つ展開になってきました。対して、JPY・NZDの強さが目立ってきています。FOMCの政策金利の発表を確認したため、USDを手掛けやすくなってきています。USDは上値の重さが確認できるため、ドルストレート通貨を中心に通貨選択をしたいと思います。

 本日はECBの政策金利の発表が最大の注目です。おそらく市場予想通りの小幅利上げにとどまると思われ、政策金利自体にサプライズはないと思われます。しかし、その後のECB総裁の会見内容に注意したいと思います。このところ欧州経済の停滞を示す経済指標が出てきていることから、今後の金融政策に対し慎重な姿勢に変化してきている可能性があると思います。現状のEURの弱さを確認する動きになるのか、反転するのか注目しておきたいと思います。また米国では、第2四半期GDPや新規失業保険申請件数が発表されます。これらの内容次第ではUSD安の動きが加速する可能性があるので警戒しておきたいと思います。

今日の環境分析 2023年7月26日

 昨日発表された米国の消費者信頼感指数は、2年ぶりの高水準となりました。NYダウが連騰するなど株式市場は上昇しており米国経済の堅調さがみられます。一方、ドイツの7月のIFO景況指数は予想を下回り、ドイツ経済の停滞が見られます。明日に予定されているECBの政策金利の利上げ方針に変更はないと思いますが、昨日のPMIの悪化と併せて、今後のECBの金融政策に大きな影響を与える結果となったと考えられます。市場全般には、本日以降の日米欧の金融政策の発表を控えて様子見気分が強く、ボラティリティも低下しています。

 通貨相関からは、EURの弱さが際立っており、EURGBPの下落基調が強まった結果、GBPの相対的な強さを確認することができます。JPY・USDともに弱い通貨に位置しており、GBPを除くメジャー通貨が軟調な展開になっています。対して、マイナー通貨の堅調な展開が続いていることから、これら通貨とGBPの買いを軸にした通貨選択をしていきたいと思います。

 本日は、明日未明のFOMCの政策金利が最大の注目です。前回の見送りから+0.25%の利上げとなる可能性が高いため、利上げ水準自体にはサプライズはないと思います。その後のFRB議長の記者会見において、どの程度タカ派発言をするのかに注目が集まっています。年内の追加利上げの可能性に言及した際、どのような表現をするのかタカ派度合いを探る動きになりそうです。また、オーストラリアの消費者物価指数に注目です。足元堅調な動きを見せているAUDの動きに注意したいと思います。

今日の環境分析 2023年7月25日

 昨日は、欧米各国・地域のPMIが発表されました。PMIは購買担当者景気指数(Purchasing Manager’s Index)の名の通り、企業の購買担当者の景況感を集計した指数になります。もっとも景気先行性が高いと考えられており、注目度の高い指標の一つです。週後半の日米欧の金融政策の会議の前に発表されたことから、会議への影響度は高いと考えられます。ユーロ圏の総合PMIは8か月ぶりの低水準となり、2か月連続で景気判断の基準となる50を割れました。欧州経済の景気後退懸念が強まっています。ユーロ圏PMIの前に発表されたフランス・ドイツともに予想外の悪化にEURは急落しました。米国のPMIでは、製造業PMIが予想を上回ったものの連続して50割れとなりました。欧米全般に製造業PMIの悪化がみられることから、実体経済の停滞を確認することができると思います。インフレ持続への警戒感と景気停滞との綱引きの中、どのような金融政策を打ち出してくるのか注目です。

 通貨相関からは、下位足でJPYの弱さとUSDの強さが継続しています。昨日のPMIの結果を受けてEURの弱さが目立つ展開になってきました。GBPもEURと同様の動きになっています。USDにつれてCADの堅調さも目立つ状況になっています。現在の方向感のない市場においては、昨日のPMIの発表時のような急変動はいつ起こってもおかしくないため、本日も通貨を特定せずに、個々の通貨ペアの動きを追っていきたいと思います。

 本日は、ドイツのIFO景況指数と米国の消費者信頼感指数の発表がありますが、注目度は低いと考えていました。しかし、昨日のドイツのPMIの内容を見て、IFO景況指数には反応する可能性があるため、EURの動きには警戒したいと思います。全般には、明日以降の金融政策の発表を前に、様子見の動きが継続すると思われます。

今日の環境分析 2023年7月24日

 先週末金曜日に発表された日本の6月の全国消費者物価指数は総合で+3.3%の上昇となりました。日銀関係筋からの情報として 「現時点でYCC修正の必要性乏しい、経済に前向きな動きがある中で緩和継続は重要と認識」 などと報じられたことで円売りが加速し、USDJPYは142円手前まで上昇しました。現在の価格は日足のミドルバンドに頭を押さえられる動きになっており、一気に上値を追う動きにはなっていません。日銀のYCC修正見送りはすでに市場のコンセンサスになっているため、この報道を受けての動きは過剰反応に思われます。

 通貨相関からは、下位足でJPYの弱さ、USDの強さが目立つ展開となりました。日足と逆方向の動きになっていることから調整の動きと判断できますが、この動きの継続性に注目しています。その他の通貨も方向感の判断が難しい状況にあります。今週前半は週後半の重大なイベントを前に様子見の展開が想定されます。このため、特に通貨を特定せずに、個々の通貨ペアの動きを追っていきたいと思います。

 今週は、週後半にある日米欧の金融政策の発表に警戒したいと思います。水曜日(日本時間木曜日未明)にFOMC、木曜日にECB、金曜日に日銀の金融政策が発表されます。内容を確認するまでは様子見の展開になると思われます。もし市場予想通りの米国利上げ・日本修正見送りとなると、材料確認の動きから、円安が加速し金曜日には145円も想定されます。こうした動きはすでに市場では織り込みつつあることから、少しでも市場予想に反する発言内容があれば逆に過剰な反応を想定されることから、警戒して臨みたいと思います。
 本日は、欧米各国・地域のPMIが発表されます。その内容は、週後半の金融当局のコメントに影響を与えると思われます。各発表時間の通貨の動きには注意して臨みたいと思います。

今日の環境分析 2023年7月21日

 昨日発表された米国の新規失業保険申請件数は、市場予想に反して低下し労働市場の逼迫を確認することとなりました。来週のFOMCにおいては、利上げ再開が市場のコンセンサスになっており、9月は見送りと判断されていました。しかし、労働環境面からインフレ持続の判断が強まり、9月の利上げを見込む動きが優勢になりつつあります。日銀総裁の政策修正否定を示唆した発言も背景に、USDJPYは140円台に乗せる動きになりました。ファンダメンタルズからは円安ドル高の環境にはありますが、テクニカルからは戻りは鈍いと考えています。月初の高値から中旬までの下落後の反発は、半値戻しに達成していないため戻りは限界にあると考えています。市場全般では、小動きの推移となっており、方向感のつかみにくい展開になっています。

 通貨相関からは、下位足が上位足と反対の動きになっており、方向感のつかみにくい展開になっています。これまで堅調だったEURも調整の動きを見せており、強弱を判断するのが難しい局面となりました。このような局面では、あえて通貨選択を特定せずに見送りで臨みたいと思います。方向感が出るのを待って、その方向に沿った戦略を構築したいと思います。
 
 本日は、日本の全国消費者物価指数に注目です。日銀総裁の見送り発言を修正せざるを得ない内容になるのか注目です。来週の日銀の金融政策決定会合を前に、重要な経済指標になると思われるため、警戒しておきたいと思います。その他、英国とカナダの小売売上高にも注目です。金利上昇に伴う景気停滞を確認することになるのか、それとも好調な経済実体であるのか内容に注意したいと思います。

今日の環境分析 2023年7月20日

 インドで開催されていたG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、日銀総裁の政策修正否定を示唆する発言が市場に広がったことで、イールドカーブ・コントロール政策の修正を期待した円高の動きを牽制することとなりました。来週27~28日の日銀の金融政策決定会合に注目が集まっており、28日昼頃の金融政策の発表まで市場は神経質な展開が想定されます。26日の米国・27日の欧州の金融政策の発表もあることから、市場全般にも神経質な展開が蔓延するものと思われます。昨日発表された6月の英国の消費者物価指数は、前年比+7.9%と1年3月ぶりに8%割れ、市場予想をも下回りGBPは一時大きく下落したものの、その後、発表前の水準に戻り金融引締めの継続を評価する動きなりました。

 通貨相関からは、EURの強さが継続しており、JPYも堅調な展開となっています。足元のUSDの反発があるため、USDJPYは戻り歩調にあるものの、上値を追う展開にはなっていません。EURJPYの堅調さに対し、GBPJPY・AUDJPYの横ばいの動きなど、クロス円通貨の方向性はばらばらにあるため、JPYを軸に通貨選択はしないようにしたいと思います。EURUSDは依然として収束の最終局面にあるため、動き出しに注意したいと思います。AUD・NZDの弱さは継続しています。このため、EURの買い、AUD・NZDの売りを軸にした通貨選択をしたいと思います。

 本日は、オーストラリアの失業率に注目です。また、米国の新規失業保険申請件数にも注目です。労働市場の動向は、金融政策に大きく影響を与えるため、その内容には注意したいと思います。全般に、方向感のない展開が続いているため、レンジ内トレードに徹していきたいと思います。大きなトレンド狙いより確実な利確を優先するトレードをしたいと思います。